急成長中のAIエージェント開発向けTypeScriptフレームワーク「Mastra」を解説!

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急成長中のAIエージェント開発向けTypeScriptフレームワーク「Mastra」を解説!

Gatsbyを開発したチームから誕生した「Mastra」は、TypeScriptを使ってAIエージェントをスピーディに開発できるフレームワークです。AI機能をわずか数行のコードで実装でき、エージェント開発、ワークフロー構築、RAG実装、運用監視まで包括的にサポート。オープンソースで提供され、日本からのトラフィックも8%を超えるなど急速に注目を集めています。多様なAIプロバイダーに対応し、エンタープライズレベルのAIアプリケーション開発を加速させる先進ツールを詳しく解説します。

AIエージェント開発を加速する「Mastra」

AIエージェント開発の世界に革命を起こす新たなフレームワークが登場しました。「Mastra」は、Reactフレームワーク「Gatsby」を生み出したチームによって開発された、TypeScriptベースのAIエージェント開発フレームワークです。

このフレームワークは、最新のAI機能をモダンなJavaScriptスタックと組み合わせることで、開発者がプロトタイプから本番環境まで、AIを活用したアプリケーションを迅速に構築できる環境を提供します。

導入は非常に簡単で、以下のコマンド一つで開始できます。

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$ npx create-mastra@latest

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Mastraは公開直後から開発者コミュニティで大きな注目を集めており、日本からのトラフィックも全体の8%を超えるなど、国内外で急速に採用が進んでいます。それでは、このフレームワークが提供する主要機能を詳しく見ていきましょう。

主要機能① エージェント - 高度なAIアシスタントの構築

Mastraの核となる「エージェント」機能は、指定した作業を実行し、必要な情報にアクセスし、会話の履歴を保持できる自動処理システムを構築するための基盤を提供します。

・統合プロバイダーAPI

最も注目すべき機能の一つが、異なるAI企業のサービスを簡単に切り替えられる統合APIです。わずか1行のコード変更だけで、OpenAI、Anthropic、Geminiなど異なるAIサービスを切り替えることができます。

この柔軟性により、開発者は特定のAI企業に依存することなく、異なるAIモデルを簡単にテスト・評価できます。

・メモリ機能

Mastraでは、長期メモリと最近のメッセージを組み合わせることで、エージェントの記憶能力を強化しています。これにより、ユーザーとの会話の文脈を長期間にわたって維持することが可能になり、より自然で一貫性のある対話を実現できます。

・プロンプトチューニング

プロンプト(指示文)の作成は、AIエージェント開発における重要なステップです。Mastraは、ローカル環境でプロンプトを素早く作成・評価できる環境を提供し、LLMの支援を受けながらプロンプトを最適化できます。

・ツール呼び出し

エージェントに外部機能へのアクセス権を付与することで、より強力なアプリケーションを構築できます。Mastraでは、エージェントが関数を呼び出したり、他のシステムと対話したり、現実世界での動作を指示したりできるようになります。

主要機能② ワークフロー - 複雑なAI操作シーケンスの実行

Mastraの「ワークフロー」機能は、複数のAI処理を順序立てて実行するための仕組みを提供します。各処理ステップを視覚的に追跡できる機能が組み込まれており、AIが行う一連の作業を明確に管理することができます。

・明確な制御フロー

XState(状態管理ライブラリ)をベースにした、分岐、連続処理、合流、条件判断のための直感的な書き方を提供します。これにより、複雑なAI処理の流れを見やすく管理しやすい形で設計できます。

・処理の一時停止と再開機能

.suspend()と.resume()メソッドを使えば、処理の途中で実行を一時停止し、その状態を保存しておき、人間の操作があった時に再開することができます。これにより、AIだけで完結せず、人間の判断を挟むことができるハイブリッド型のAI処理の流れを作ることができます。

・リアルタイムの進捗確認機能

.watch()メソッドを使うと、長時間かかる処理の進み具合をユーザーにリアルタイムで表示できます。処理ステップが完了するたびに自動的に情報が更新されるため、ユーザーは今どの段階まで処理が進んでいるのかをひと目で確認できます。

・エージェント/ワークフロー連携

柔軟なアーキテクチャ設計が可能で、エージェントをワークフローに組み込んだり、ワークフローをエージェントのツールとして渡したりすることができます。この柔軟性により、複雑なAIシステムを構築する際の設計の自由度が大幅に向上します。

主要機能③ RAG - コンテキスト最適化

Mastraは、AIが適切な情報にアクセスして回答するために必要な情報検索機能を包括的にサポートしています。外部サービスからデータを取得し、ウェブから情報を収集し、それらをAIが使える形で整理して保存・活用することが可能です。

・複数データベース統合管理

様々なデータベースに対して、データの追加・更新・検索を一貫した方法で行うためのAPI機能を提供します。これにより、データベースの種類を意識せずに、情報の保存と検索を簡単に行うことができます。

・情報の絞り込み検索

情報源、時間範囲、その他の属性を指定して検索することで、大量の情報の中から必要なものだけを効率よく見つけ出せます。これにより、膨大な知識データベースの中からより正確に関連情報を取り出すことができるようになります。

・自動情報検索機能

AIエージェントに情報検索ツールを組み込むことで、必要な情報を自動的に探し出せるようになります。これにより、ユーザーとの会話中にAIが自ら必要な情報を探し、より正確で根拠のある回答ができるようになります。

主要機能④ オペレーション - パフォーマンス監視と評価

Mastraは、AI処理の各段階の入出力を記録し、AIの判断やツール使用状況を確認するための機能を提供します。これにより、AI処理の適切さ、出力の質、正確性を測定し、独自の評価方法を作成することができます。

・性能測定指標

正確性、関連性、処理コスト、応答速度などの指標を測定・記録することができます。これにより、AIアプリケーションの性能を継続的に監視し、改善することが可能になります。

・品質評価機能

ルールベースと統計的手法を使用して、AIの出力結果を自動テストすることができます。これにより、AIシステムの回答品質を客観的に評価し、改善が必要な点を特定することが可能になります。

・詳細な動作ログ記録

エージェントは、実行中の詳細な動作記録(OpenTelemetryトレース)を自動的に残します。これにより開発者は問題が発生した時に何が起きていたのかを詳しく確認でき、複雑なAI処理の中で遅延が発生している箇所や不具合の原因をより素早く特定できるようになります。

市場動向と今後の展望

AIエージェント開発フレームワークの市場は急速に成長しており、Mastraはその中でも注目を集めるプレイヤーとなっています。特に、単一の対話AIから一歩進んだ「自律的に考えて動くAIエージェント」が次のトレンドとして注目される中、Mastraのようなフレームワークの重要性はさらに高まるでしょう。

開発者コミュニティでの反応も極めて良好で、GitHubのスター数が急増するなど、短期間で大きな支持を獲得しています。日本国内でも高い関心を集めており、全トラフィックの8%以上が日本からのアクセスとなっていることからも、その注目度の高さがうかがえます。

今後は、外部サービス連携の拡充やコミュニティ主導の拡張が進み、機能はさらに充実していくことが予想されます。

まとめ

「Mastra」は、AIエージェント開発を民主化し、最近需要が高まっているTypeScriptを使ってAI機能を実装できるようにする革新的なフレームワークです。エージェント構築、ワークフロー管理、RAG実装、パフォーマンス監視までを包括的にサポートし、異なるAIプロバイダー間の切り替えも容易に実現します。

このフレームワークは、プロトタイピングから本番環境までのAI機能実装を大幅に効率化し、次世代の高度なアプリケーション開発を加速させるでしょう。急速に成長するAIエージェント市場において、TypeScriptによる型安全性と柔軟な拡張性を併せ持つMastraは、今後ますます重要なツールとなることが期待されます。

mastra:https://mastra.ai/
Github:https://github.com/mastra-ai/mastra

【出典】