TypeScriptベースのAIエージェント開発フレームワーク「Mastra」が3月に2回の大幅アップデートを実施。ワークフロー制御の拡張、音声機能の強化、マルチエージェントシステムの導入など、エンタープライズレベルのAIエージェント開発をより柔軟かつ効率的に行える機能が追加。パフォーマンス最適化も進み、サーバーレスデプロイのバンドルサイズが90MBから8MBへと大幅に削減されるなど、実用性が大きく向上しました。
AIエージェント開発フレームワーク「Mastra」の進化
Gatsbyの開発チームから誕生したTypeScriptベースのAIエージェント開発フレームワーク「Mastra」が、3月に入って立て続けに機能強化を実施しました。当メディアでも以前紹介したMastraは、AIエージェント開発を効率化するフレームワークとして急速に注目を集めていますが、最新アップデートではさらに高度なエージェント開発を可能にする機能が多数追加されています。
今回のアップデートでは、ワークフロー機能の大幅拡張、リアルタイム音声対応の強化、複数エージェントの連携システムの導入など、より複雑なAIアプリケーション開発を支援する機能が充実しました。これらの機能強化により、開発者はより少ないコードでより高度なAIエージェントを構築できるようになっています。
・「Mastra」解説:https://aihub-aiagent.com/development/vt72mmie_kpl
3月前半の主要アップデート:強化されたワークフロー制御と音声機能
3月14日のアップデートでは、まずワークフローに関する制御フローが大幅に拡張されました。
1.While/Untilループ構文の追加
これまでのMastraでは明示的なループ処理が難しかった部分が改善され、条件が満たされるまで特定のステップを繰り返し実行できる構文が追加されました。以下は基本的なwhileループの例です

同様に、条件が満たされるまで繰り返すuntil構文も追加

2.複合Afterシンタックスの強化
ステップ間の依存関係をより柔軟に定義できる機能が追加され、複雑な分岐と合流を表現できるようになりました。この例では、stepAから始まり複数の並列処理パスを定義し、最終的に処理を合流させる複雑なワークフローを簡潔に表現しています。

3.If-Else分岐の実験的サポート
条件に基づいてワークフローの流れを分岐させる機能も追加されました:

4.Mastra Voice機能の強化
音声インターフェース機能も大幅に強化:
- 1.WebSocket接続のサポートが追加され、音声プロバイダとのリアルタイム双方向通信が可能に
- 2.イベント駆動型アーキテクチャの導入により、より応答性の高い音声インタラクションが実現
- 3.OpenAI Realtime APIをはじめとする音声対応の強化
5.メモリとベクトル管理の改善
セキュリティ強化として、リソース所有権の検証機能が追加:

マルチエージェント連携システム「AgentNetwork」のプレビュー
3月14日のアップデートでは、複数のエージェントが協力して作業を行える「AgentNetwork」機能のプレビューも公開されました。この機能を使うと、異なる役割を持つ複数のエージェントを連携させて複雑なタスクを処理できます:

このコードは、情報収集を行うresearchAgentと情報を要約するsummaryAgentを組み合わせたリサーチアシスタントネットワークを作成しています。AgentNetworkは各エージェント間のメモリ同期を自動的に処理し、関連する共有コンテキストに各エージェントがアクセスできるようにします。
新しいLLMプロバイダーオプションとパフォーマンス最適化
3月27日のアップデートでは、CerebrasとGroqが新たにLLMプロバイダーオプションとして追加され、AIバックエンドの選択肢が拡大しました。
パフォーマンスに関する最適化も進み、特にサーバーレスデプロイに関して以下の改善が行われました:
- 1.バンドルサイズの大幅な削減(90MBから8MBへ)
- 2.Vercel、Netlify、Cloudflare Edgeへのデプロイ改善
- 3.コールドスタート時間の短縮
メモリ操作に関しても、新しいMem0統合の追加や長いメッセージ入力に対するセマンティック検索の改善など、最適化が行われています。
まとめ
Mastraの3月のアップデートは、AIエージェント開発の柔軟性と効率性を大幅に向上させるものとなりました。特にワークフロー制御の拡張と音声機能の強化は、より複雑で高度なAIアプリケーションを少ないコードで開発できるようにするものです。
マルチエージェント連携システム「AgentNetwork」の導入により、異なる役割を持つAIエージェントを組み合わせた複雑なシステムの構築も容易になりました。サーバーレスデプロイのパフォーマンス最適化やバンドルサイズの削減など、実用面での改善も進んでおり、本番環境での利用をさらに促進するものとなっています。
TypeScriptの型安全性に加え、今回のアップデートでさらに柔軟性と拡張性が向上したMastraは、急速に発展するAIエージェント開発の現場で、ますます重要なツールとなることが期待されます。
・「Mastra」解説:https://aihub-aiagent.com/development/vt72mmie_kpl
・サービス詳細:https://mastra.ai/