「中国製AIは安全保障の脅威」OpenAIが米政府に警鐘 ─ 激化するAI覇権争いで対中包囲網を提言

ニュース
「中国製AIは安全保障の脅威」OpenAIが米政府に警鐘 ─ 激化するAI覇権争いで対中包囲網を提言

「民主主義vsデジタル権威主義」の構図を鮮明に打ち出したOpenAIの衝撃的政策提言。トランプ政権のAI政策に影響力を持つ同社が、中国AIモデル「DeepSeek」を「国家管理下」と断定し、対中包囲網構築を訴える。国家安全保障の名の下に中国製AI排除を求める提言書からは、世界のAI覇権を賭けた水面下の激しい闘争が浮かび上がる。

米国AI覇権の維持を目指すOpenAIの政策提言

OpenAIが3月13日、米国科学技術政策局(OSTP)に向けて、トランプ政権が進める「AIアクションプラン」(AI Action Plan)に対する政策提言書を提出しました。この提言書では、米国のAIリーダーシップを維持・強化するための具体的な戦略が示されています。

特に注目すべきは、中国のAI企業DeepSeekを「国家補助を受け」「国家管理下にある」と表現し、同社のAIモデルに対する強い懸念を表明している点です。OpenAIは、中国共産党(CCP)が2030年までに世界のAIリーダーになることを目指しているとの認識を示し、民主主義に基づくAI開発と権威主義的なAI開発の競争という枠組みで議論を展開しています。

OpenAIのクリストファー・レハーン副社長(グローバル担当)は提言書の中で、「米国を筆頭とする世界のAI産業が人工知能全般(AGI)に近づく中、2030年までに追い越すことを決意した中国共産党との競争において、トランプ政権の新しいAI行動計画は、民主的原則に基づく米国主導のAIが、中国共産党が構築する専制的・権威主義的AIに勝ち続けることを保証できる」と述べています。

DeepSeekに対する具体的懸念

OpenAIがDeepSeekについて特に懸念を示しているのは、同社のR1モデルの能力そのものではなく、中国政府との関係性です。提言書によれば、「ファーウェイと同様に、DeepSeekのモデルを重要インフラストラクチャーやその他の高リスクユースケースに組み込むことには大きなリスクがある」とし、その理由として「DeepSeekが中国共産党によってモデルを操作して危害を与えるよう強制される可能性」を挙げています。

また、OpenAIは「DeepSeekは同時に国家補助を受け、国家管理下にあり、かつ自由に利用可能であるため、ユーザーが支払う代償はプライバシーとセキュリティだ」と指摘。中国の法律の下でユーザーデータの要求に応じる義務があり、そのデータを中国共産党の使用のためにより高度なシステムを訓練するために使用していると主張しています。

さらに、DeepSeekのモデルが「身元詐称や知的財産の窃盗などの違法で有害な活動のハウツーをより積極的に生成する」点も批判し、これを「中国共産党が米国の知的財産権の侵害を欠陥ではなく特徴と見なしていることの反映」と表現しています。

ただし、報道によれば、OpenAIが「モデル」という言葉で具体的に何を指しているのか(DeepSeekのAPI、公開モデル、あるいはその両方か)は明確ではありません。DeepSeekの公開モデル自体には中国政府がユーザーデータを抜き取ることができるメカニズムは含まれておらず、Microsoft、Perplexity、Amazonなどの企業がそれらを自社のインフラ上でホストしています。

米国主導の「民主的AI」を推進するための提案

OpenAIは提言書の中で、米国のAIリーダーシップを維持するための5つの重要な戦略を提案しています:

1.革新の自由を確保する規制戦略:連邦政府と民間セクターの間で自発的パートナーシップの枠組みを創設し、国家安全保障を保護・強化する。これにより、州レベルの煩雑な規制から企業を保護し、イノベーションを促進する。

2.「民主的AI」を輸出する輸出管理戦略:米国のAIシステムへのアクセスを求める国々に対して、商業成長レンズを適用するアプローチ。米国のAIシステムのグローバルな採用を積極的に促進し、同時に輸出管理を使って米国のAIリードを保護する。

3.学習の自由を促進する著作権戦略:米国の強固でバランスの取れた知的財産システムをAI時代にも拡張し、コンテンツ作成者の権利と利益を保護しながら、米国のAIリーダーシップと国家安全保障も保護する。

4.成長を推進するインフラ機会の活用:米国のAIリードを維持するために必要なインフラを構築し、中国とその動員された資源と競争する。国全体の再工業化を促進し、何十万もの雇用を創出・支援し、地域経済を活性化し、エネルギーグリッドを近代化する政策を提案。

5.野心的な政府採用戦略:米国政府自体が、国民を安全で、繁栄し、自由に保つためにAIを使用する政府の例を設定することから始める。

米中AI競争の現状認識

OpenAIは、現在中国が持つ戦略的優位性として以下の点を挙げています:

・権威主義国家として、データ、エネルギー、技術的人材、国内チップ開発能力を構築するための莫大な資金など、リソースを迅速に動員する能力

・既存の「一帯一路」主導権の活用。ファーウェイと同様に、AIツールやインフラ資金を必要とする国々を強制することで、DeepSeekのような中国ベースのAIシステムの採用を拡大

・個別の米国州が独自の業界全体の法律を可決しようとすることで生じる規制裁定取引から利益を得る能力

・著作権裁定取引から利益を得る能力。民主主義国家が訓練データの量を減少させる一方で、中国は同じデータへのアクセスをすでに持っている可能性が高い

「今日、米国はAIでリードを維持していますが、DeepSeekは私たちのリードが広くなく、狭まっていることを示しています」とOpenAIは述べ、米国主導のAIが中国主導のAIに勝ち、米国のAIリーダーシップとすべての米国人にとってより明るい未来を確保するためのAI行動計画の必要性を強調しています。

トランプ政権のAI戦略と公開意見募集

ホワイトハウスは2月25日、トランプ大統領による最近のAI大統領令が、AI技術革新における米国のグローバルリーダーシップに取り組んでいることを示すと発表しました。この大統領令は、「米国のグローバルAI優位性を維持・強化するためのAIアクションプラン」の策定を指示したものです。

リン・パーカー科学技術政策局(OSTP)主任副局長は「トランプ政権は、米国がAI技術における間違いのないリーダーであることを確実にすることに取り組んでいます。このAI行動計画は、米国のAI優位性を確保し前進させるための最初のステップであり、一般の方々のコメントや革新的なアイデアを取り入れることを楽しみにしています」と述べています。

AIアクションプランは、米国をAIパワーハウスとしての地位を強化するための優先的な政策行動を定義し、不必要に煩雑な要件が民間セクターのイノベーションを妨げることを防ぐことを目指しています。適切な政府政策により、継続的な米国のAIリーダーシップは人間の繁栄、経済競争力、および国家安全保障を促進するとしています。

OSTPからの情報提供要請(RFI)は、AIアクションプランに含めるべき行動について、学界、業界団体、民間セクター組織、州、地方および部族政府、その他の関心のある公共団体からの意見を求めています。コメントは3月15日まで受け付けられます。

まとめ

OpenAIの政策提言は、急速に発展する世界のAI競争の中で、米国のリーダーシップを維持するための包括的な戦略を示すものです。特に中国のAI企業DeepSeekに対する懸念を強調し、安全保障リスクを指摘する一方で、米国主導の「民主的AI」の重要性を訴えています。

AI技術の発展がもたらす経済的可能性と安全保障上の課題のバランスをどう取るかという問題は、今後のグローバルAI政策の重要なテーマとなるでしょう。トランプ政権のAI行動計画がどのような形で具体化されるか、そして米中のAI競争がどのように展開していくのかは、引き続き注目される重要なトピックです。

【出典】

AI HUB

AI HUB公式

@AIHUB_JP

「AI HUB」は、AI Agentが活躍する未来を創るために、国内外の最新AI Agentニュースや活用事例、技術解説などを発信する専門メディアです。

AI HUBのX(旧Twitter)アカウントでは、AI Agentの最新ニュースやトレンド情報をリアルタイムで発信しています。

フォローして最新情報をキャッチしましょう!