戦略的パートナーシップ拡大で企業の選択肢を大幅に拡充
Salesforceと Google Cloudは戦略的パートナーシップの大幅な拡大を発表し、GoogleのGeminiモデルをSalesforceのAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」に統合することになりました。この提携により、企業はAIエージェントを構築・展開する際に使用するモデルや機能の選択肢が広がります。
急速に進化するAI環境において、企業は最新のイノベーションへの追随に苦労していますが、今回のパートナーシップ拡大は、企業が単一のモデルプロバイダーに縛られることなく、それぞれのニーズに合ったAIソリューションを開発できる柔軟性を提供します。
マルチモーダル対応で複雑なタスク処理が可能に
AgentforceにGoogleのGeminiモデルが導入されることで、AIエージェントは画像、音声、動画などを扱えるようになります。これにより、顧客サービスや業務支援などの領域で、従来よりも高度なタスク処理が可能になります。
具体的には、Geminiの主な特徴として以下の機能がAgentforceに統合されます:
マルチモーダル機能:
Geminiのネイティブなマルチモーダル機能により、AIエージェントは視覚的情報を「見て」解釈できるようになります。例えば、エラーコードを含む画像を認識したり、音声から感情を検出したりすることが可能になります。
拡張されたコンテキスト理解:
Geminiの200万トークンのコンテキストウィンドウにより、AIエージェントはコードベース全体、長年にわたる顧客とのやり取り、製品ドキュメントなど、膨大な量の情報を保持し参照することができます。
Google検索によるリアルタイム応答:
Vertex AIを通じてGoogle検索を活用することで、AgentforceのAIエージェントは最新のデータ、ニュース、時事イベントを参照できるようになり、より正確で裏付けのある回答が可能になります。
実用例:保険金請求プロセスの効率化
この統合の実用例として、保険業界での活用が挙げられます。顧客が損害の写真や目撃者の音声メールを添付して保険金の請求を行った場合、Geminiを活用したAgentforceは、これらすべての入力を処理し、請求の正当性を評価、場合によってはテキストを音声に変換して顧客に解決策を連絡することができます。
これにより、従来は長時間を要した保険金請求プロセスが大幅に合理化され、顧客体験の向上とオペレーションコストの削減が同時に実現します。
サービス機能の強化とインフラの最適化
パートナーシップの拡大には、Salesforce Service CloudとGoogle CloudのCustomer Engagement Suiteとの統合強化も含まれています。これにより、以下の機能が実現します:
- リアルタイム音声翻訳:言語の壁を越えたリアルタイム音声翻訳と感情分析
- AIエージェント間の連携:Google Cloudの会話エージェントとAgentforceのシームレスな連携
- パーソナライズされた推奨:AIによる最適なエージェントの推奨と割り当て
また、SalesforceのAgentforce、Data Cloud、Customer 360アプリがGoogle Cloudのインフラ上で稼働するようになり、Google Cloud Marketplaceを通じた調達も可能になります。これにより、グローバル企業はSalesforceとGoogle Cloudにまたがる投資を最適化できるようになります。
データの壁を越えた統合
両社のパートナーシップでは、データの統合も重要な要素となっています。ゼロコピーアーキテクチャと強化されたメタデータにより、データのレジデンシーに関わらず、すべてのデータへの高度に安全で統合されたアクセスが可能になります。
これにより、プラットフォーム全体にわたるデータサイロが解消され、一貫性のある体験が実現します。また、Data Cloud、BigQuery、Cortex Framework間のより深い統合により、顧客は自社の企業データ全体をAIエージェントに安全にグラウンディングすることが容易になります。
生産性向上のためのワークスペース統合
SalesforceとGoogle Cloudは、SlackとGoogle Workspaceのより深い統合も検討しており、チームや組織の生産性向上を目指しています。具体的なユースケースとして、Slackのエンタープライズ検索を活用してGoogle ドライブ内のファイルにアクセスする機能や、GmailとSlack間でより簡単に情報を共有する機能などが検討されています。
業界からの評価
Wayfair(家具・ホームグッズのオンライン小売業者)のCTOであるフィオナ・タン氏は、「SalesforceとGoogle Cloudのパートナーシップ、特にGoogle Cloudインフラ上でのSalesforceの可用性、およびAgentforceとGeminiの統合により、パーソナライズされた顧客対応を可能にする強力な新機能が提供され、当社のチームはより良い顧客サービスを提供できるようになります」とコメントしています。
場の展望と今後の展開
Salesforceの調査によると、自律型AIは約2兆ドルの市場機会を創出しており、84%のCIOが「AIはインターネットと同様にビジネスにとって重要になる」と考えています。
両社は、2025年中に以下の機能の提供開始を予定しています:
- Google検索によるAgentforceのリアルタイム応答
- AgentforceでのGeminiモデルの直接利用
- TableauとLooker、BigQueryの新しいネイティブ統合
急速に進化するAI市場において、企業はオープン性、信頼性、選択肢を重視したAIエージェント戦略が求められています。SalesforceとGoogleの今回のパートナーシップ拡大は、そうした企業のニーズに応えるものとなっています。