AIスタートアップのAgentic Marketing Technologies(AMT)が開発したAIエージェント「Lyra」は、インフルエンサーマーケティングの煩雑な作業を自動化するソリューションです。NFX主導の350万ドルのシード資金調達を発表したAMTは、インフルエンサーとのコミュニケーション、キャンペーン管理、成果追跡などを自動化し、マーケティングチームがヘッドカウントを増やさずにクリエイターとのパートナーシップを拡大できるプラットフォームを提供しています。
インフルエンサーマーケティングの課題に挑むAIエージェント「Lyra」
インフルエンサーマーケティングの世界には長年の課題がありました。クリエイターとの契約交渉、キャンペーン管理、結果の追跡など、多くの人手と時間を要する作業が山積みです。特に複数のインフルエンサーと同時に連携する場合、マーケティングチームの負担は指数関数的に増加します。
この課題に革新的なアプローチで挑んでいるのが、Agentic Marketing Technologies(AMT)が開発したAIエージェント「Lyra」です。Lyraは、インフルエンサーマーケティングの煩雑な業務を自動化し、マーケティングチームが人員を増やすことなく、数百、数千のクリエイターとの連携を可能にします。
AMTの誕生と資金調達
AMTは最近、サンフランシスコを拠点とするベンチャーキャピタルNFXが主導する350万ドルのシード資金調達を発表しました。ロンドンから拠点をサンフランシスコに移すAMTは、すでにLe Petit Lunetier、Neoplants、Wildなどの顧客を獲得していると発表しています。
AMTの共同創業者兼CEOであるTom Hollands氏は、自身がインフルエンサーマーケティング予算を管理した経験から、この分野の課題に精通していました。もう一人の共同創業者であるCTO Christian Johnston氏は、以前にアドテックデータインフラストラクチャを構築した経験を持ちます。
Hollands氏はTechCrunchの取材に対し、現在の市場の問題点を次のように説明しています。「今日の市場の問題点は、インフルエンサーマーケティングを拡大する方法として、22歳の若者を雇い、1日20時間働かせ、彼らが限界に達するまでできるだけ多くのパートナーシップを任せることです。彼らはメッセージを送るインフルエンサーの名前を覚えられず、手動でフォローアップするのに時間を費やしています」
Lyraのテクノロジーと機能
Lyraは、自然言語を使用してインフルエンサーと対話し、キャンペーンの予約、結果の追跡、支払い、問い合わせへの回答などのタスクを支援します。AMTによれば、Lyraはキャンペーンの目標に合ったインフルエンサーを自律的に見つけることもできます。
AMTは、OpenAI(一般的な用途向け)、Google Gemini(マルチモーダル、つまりクリエイターの動画分析用)、Hume AI(「トーン」用)など、複数のAIモデルを組み合わせて使用しています。Hollands氏によれば、「各タスクに最適なモデルをプロバイダーに関係なく使用している」と。
Hollands氏は、AIが実際にインフルエンサーのコンテンツを「視聴」し「理解」できるため、はるかにパーソナライズされた体験を提供できると主張しています。「AIは各インフルエンサーの声のトーンを実際に理解できます」とHollands氏は述べています。「これにより、パートナーシップマネージャーのように、複数のブランドにわたって1人のインフルエンサーとコミュニケーションをとることが可能になります。なぜなら、これらのさまざまな会話のすべての関係履歴を持っているからです」
Lyraの主要機能
Lyraは以下のような機能を提供しています:
- 1.AI駆動のクリエイター発掘:
10億以上のシグナルと1億以上のクリエイターからブランドに適したインフルエンサーを見つけ出します。
- 2.クリエイター検証:
AIを使用して各クリエイターのコンテンツを150以上の基準でチェックし、ブランドに合ったクリエイターを確実に選別します。
- 3.関係構築の自動化:
AIを活用して各クリエイターとのやり取りをパーソナライズし、ブランドへの愛着を育み、継続的なパートナーシップを促進します。
- 4.キャンペーン管理の自動化:
メール作成、契約交渉、取引締結、製品発送、フォローアップ、クリエイターへの支払いなど、キャンペーン実施に必要な数千の小さなアクションを自動化します。
- 5.成果追跡と分析:
各クリエイターのコンテンツを検出し、直接販売にマッピングします。すべてをAIで自動的にレポートします。
従来のプラットフォームとの違い
インフルエンサーマーケティングの市場は今年2669.2億ドル規模と予測されていますが、GRIN、Upfluenceなどの従来のインフルエンサーマーケティングSaaSプラットフォームや、ShopMy、Agentioなどのマーケットプレイスは、キャンペーンを実行するために人間の関与を必要とします。これらは通常、ユーザーシート単位で課金されます。AMTのAI主導のアプローチは、関与する人間がはるかに少ないことから、明らかに異なる経済性を持っています。
AMTによれば、1つのインフルエンサーパートナーシップを確保するのに通常9時間の手作業が必要ですが、同社のプラットフォームを使用すれば、わずか5分で済みます。
業界からの反応
NFXのゼネラルパートナーであるPete Flint氏は次のようにコメントしています。「AIは根本的に産業を再形成しており、マーケティングも例外ではありません。AMTのアプローチは、単にツールを構築するのではなく、人間の仕事をAIに置き換えるという点でユニークであり、世界中のブランドにとってマーケティングスタックの必然的な部分となるでしょう」
Le Petit Lunetierのマーケティング責任者Rodrigo Aragao氏は、「Lyraは毎月何千ものクリエイターと私たちのために連携してくれます。しかも、私たちが通常サポートできない言語でも対応してくれます」と述べています。
同様に、Wildのグローバルインフルエンサーマーケティング責任者Laura Donadio氏は、「Lyraは米国でのローンチのために700以上のコンテンツを提供してくれました。パーソナライズされたフォローアップは画期的でした」と評価しています。
UNiDAYSのGrowth担当Henry Berry氏は、「Lyraは何時間もかかる作業を数分で完了できる」と述べています。
まとめ
AIエージェント「Lyra」を開発したAMTは、インフルエンサーマーケティングの自動化という新たな領域に挑戦しています。OpenAI、Google Gemini、Hume AIなどの複数のAIモデルを組み合わせ、インフルエンサーとのコミュニケーションやキャンペーン管理を自動化することで、マーケティングチームの負担を大幅に軽減し、スケーラビリティを向上させています。
350万ドルのシード資金調達を完了し、すでにいくつかの顧客を獲得しているAMTは、急成長するインフルエンサーマーケティング市場において、AI駆動の効率化と自動化の波を先導しています。
サービス詳細:https://www.amt.ai/